気付いたら11月が終わって、12月を迎えていた。気温はぐっと低くなり、コートなしでは外を出歩けなくなった。高校生の頃からずっと着続けているベロア地の黒いコートには、また今年もお世話になる。

仕事ばかりしている。朝起きて、シャワーを浴びて、歯を磨いて、化粧をして、髪の毛を乾かして、服を選んで、家を飛び出す。満員電車に揺られて、会社の最寄りのコンビニで朝ごはんを買い、事務所でメールチェックをしながらおにぎりなり何なりを頬張る。定時を迎えてからは、電話応対、在庫確認、エクセルとの戦い、とにかくお昼の休憩だけを楽しみにして作業を続ける。お昼には泥のように眠り、また仕事を再開する。日によって早く帰れる日もあれば、日をまたいで帰ることもある。たまに、職場の人と少し飲んでから帰ることもある。職場の人のことは好きだ。頼まれれば何でもやるし、もっといろんなことを話したいと思う。どんな風に生きてきたのか、どんな音楽を聞くのか、何を考えながら生きているのか、とか。
家に帰るときの電車には、わたしと同じような表情の会社勤めの人ばかりで、そこには覇気はない。皆一様にスマートフォンを見つめるか、眠るか、パソコンを開いて仕事の続きをするか。本を読む人は減った。かく言うわたしだって、今電車の中でスマートフォンの虜だ。


土日は寝てばかりで、どこかに行くと言えば相変わらず近所のインドカレー屋か商店街を歩くかぐらいだ。たまにライブがあったり友人からのお誘いがあったりして恋人を置いてどこかしらに出かけるけれど、大半は二人で特に何もやることもなくごろごろしている。それがいいことなのかわからないけれど、限りなく幸せなんだろう。
生活から彩りが消えて、ついでに刺激も消えた。わたしの求めるものが何なのかわからなくなってしまった。大人になるというのはこういうことなのかなぁとぼんやり思いながら、家に帰ったら魚を焼こうとかそんなことを考えている。生活感が溢れている。


身動きが取れない。自分を壊したい。脱皮したい。
わたしは人間が大好きで大好きで仕方がないのに、話す時間があまりにも短過ぎる。