生きることについて、希望を持つようになった。絶望から希望へ這いあがることについて、魅力を感じるようになった。すべてを振り切りながら生きることが、実は結構楽しいんじゃないだろうか、と思うようになった。
大好きな彼が丸くなった。自分で言っていた。お前らなんか下らないから消えれば、みたいなスタンスで生きていた彼が、少しだけ愛情を持つようになり、最終的には愛のために生きるような男になっていた。彼は昔の彼ではなかった。わたしが魅力を感じた刺々しさだらけの彼は、いつの間にか毬のようになっていた。
そういえば、深夜の電話もかかってこなくなった。わたしが不必要になったのか、それとも彼が普通の生活を送り始めたのか。どちらにしてもこうやって朝まで起き続けることには、もうメリットはないらしい。彼の電話を待つ必要がないのだ。


最初の目標は、対等になることだった。気付いたら同じ位置に立っていた。彼が下がってきたのかわたしが上がったのかはよくわからない。彼はわたしを見て、手を差し出した。わたしたちは握手をした。それから少しだけ話して、にこりと笑い合って、またお互いのことに没頭した。たまに思い出したように言葉を交わしながら、わたしたちは適度な距離を保ちつつ友好的な関係を続けていた。いつの間にか、必要がなくなった。それはもしかしたら、お互いの世界が充実し始めたからなのかもしれない。そこに相手の座る椅子が用意されていなかったのかもしれない。それは、ある意味の自立だったのか。
世界を切り取る作業をしたいから、まだ転ぶわけにはいかない。絶望から希望への活力は、そこらじゅうに溢れている。