「矛盾してるけどね、それでも生きてる」

昨晩、突然「手紙を書きたい」という衝動に駆られて、深夜に彼に手紙を書き始めた。勿論内容なんて他愛のないことで、メールでも電話でも話さないようなことなのだけど、個人的にはとても大事なことで、恐らくそれは言霊に乗せていつか記憶から消えるようにするより、文字にして相手に伝えるほうがいいんだろうな、と思って書いた。一ヶ月前に買った金魚のレターセットは、うまい具合に夏の便りを演出してくれたんじゃなかろうか。
突然の思いつきだったために家に切手があるはずもなく、夜中2時に郵便局に向かった。わたしが住む町には本局があるので、深夜でも営業しているという都会っぷり。コンビニに行けば済むのに、少し長めに歩いて深夜の空気を楽しんだ。さすがに女の子ひとりで夜中うろうろするのはアレかなぁ、と思い、元カレに「起きてる?」とメールをして、そのあと応答があったから帰り道に電話をした。


彼と別れてからもう1年以上経つけれど、恐らく別れていなかったらあんな話をすることもなかったんだろうな、ということばかり話した。たとえば環境についての話、運命についての話、好きなアーティストの話、平等不平等の話、親の話、高校時代の話、大学の話、就職の話、などなど。お互い一歩離れたところから相手を知りながら話すことが出来るので、より深い会話を楽しむことが出来た、と思う。付き合っていた当時は彼を馬鹿にしてひどかったけれど、客観的に見てやはり彼は素晴らしい人だった。無条件で他者を、他者の考えを肯定することが出来るなんて、それはもう一種の才能なんだろう。「俺は自分が笑って周りの人が笑ってくれるなら、辛くてもそれでいいと思うんだ」なんてさ、涙が落ちるよ。
「最近は、働いているとその一挙一動すべてが環境破壊につながっているんだと思うと、就職どころか生きることも嫌になる」と言ったら、彼は驚きながら「え、あれ、そんなこと言う人だったっけ」と呟いていた。そうね、わたしは相手を否定することから始めていたからね、でもそれって勿体ないよね、と笑ったら、そうだね、と彼も笑っていた。


恋愛関係の先に進んで得られた関係、なんだろうか。わたしは彼に出会えたことを心から光栄に思う。出来ることなら、お互い特定の相手を見つけたとしても、下らないけれど考えなくてはいけないこと、みたいなことを携帯電話で話せるような環境になれれば幸い。