久しぶり。
全然久しぶりなんかじゃないって? 何を言うんだ、随分長いこと会ってなかっただろう、この時間のきみに。元気にしていたかい。相変わらず世界の終わりみたいな顔をしている。昔の、この時間のきみも、同じような顔をしていたね。何も変わっていないのか、安心するような、少し心配するような。まぁ何にしても、とりあえず元気そうでよかったよ。
眠れないんだろ、知ってるよ、ずっと見ていた。眠れなくてインターネットの海に溺れて、もう自分のそばにいない人の影を求めて波に漂っていたんだろう。何か見つかったかい、どうせ思い出しか見つからなかったんだろう、そんな顔をしている。
新しい出会いにすべてを託せばいいじゃないか、きみの周りにはいつだって魅力的な人たちがいる。現実を見据えながら、ごくまともなことを告げてくれる、大切な人たちがいる。センチメンタルさから離れている気がするって、そりゃあもういい歳なんだから当たり前だ、いつまでも甘えたことを言うなよ。朝から夜にかけてのきみはすごいんだぜ、仕事をバリバリこなしている。服だって、きみはいつも何かに呪われていたかのように黒ばかり着ていたけど、あいつは今、ピンクだとか水色だとか、そういう春を感じさせるような色の服を着ているんだ。劇的な変化だよな、正直よくわからないよ、あいつの心境にどんな変化があったのか。
切なさとか悲しさっていうのは、絶対に消え去らないんだ。でも少しずつ削ることはできる。もしきみが自分の心の弱さを過去の環境のせいにしているなら、それはもう言い訳にしかならない。きみは本当はいろんなことを変えられる力を持っているのに、自分の意思で変えていないだけなんだ。きみは自分の切なさとか悲しさを誤魔化す術を持っているんだ。そんなこと、自分が一番理解しているんだろ。
もうじき朝だ、朝から夜にかけてのきみに交代しなくてはいけない。インターネットなんてやめて、早く眠ったほうがいい。きみは、いいかげん思い出に縋るのを、やめるべきなんだ。