すっかり変わってしまった。わたしが。
精神的健康優良児(もう児なんてつけられるような年齢でもないし、そんな気分でもない)になったわたしは、夜中に起き続けることも、意味もなく放浪することも、理由もわからず泣き続けることもなくなってしまった。精神安定剤と吐き気止めはいつの間にか飲まなくなっていて、手首を切るなんて以ての外。わたしはいつの間にか、あの頃とりあえず大切にしていた繊細な感情と、決別していたようだ。

人はそれを、鈍化したねと言うのだろう。わたしもそう思う。人生を謳歌している。何か大きなことが起きたわけでもないけれど、たぶんこれは、安定したことによる寂しさとの別離なんだろう。思春期の頃の甘酸っぱい感じとか全然思い出せないし、「あの頃は若かったから」なんて言い訳じみたことでいっぱいだし、なんかもう、なんなんすかね。変わることを拒否し続けていたのに、いざ変わってみるとこんなに潔いものなのか。


切なさとか夕暮れとか朝焼けとか涙とかそういうキラキラしてすぐに壊れそうなものをすべてどこかに置いてきたようだ。ああ、どこに置いたんだっけ、それは、どこかにやってもいいものだったんだっけ。