そんなわけで転職活動を始めた。今の会社は、経営者と社員の間に大きな溝が開いていて、まるで泥舟に乗せられているような気分。数字を見れば、なんとなーく緩やかに沈みつつあるのはわかるし、それを解消するには新しい事業、こちらは割と順調、を育てて、既存の業務は人を減らして、元いた人はどんどんさよならして、そういう風にしていきたいんだろうなぁという印象。一つの企業が社員を人と思わないように扱って、ただの低脳として見て、それがだんだんと崩壊していくのを傍観するのも楽しいかもしれないけれど、でもわたしは自分が低脳だと見られること、とやかく言われることにきっと耐えられないだろうから、新しい職場を探すことにした。

と。会社の悪口ばかり書いたけれど、いい人だっている。わたしの周りにいい人はいる。お客さんも、先輩も後輩も。でももう会社の中の人たちは目が死んでる。辛そう。みんな引きつった笑顔を浮かべながら、上司と話している。なんで動くのか、きっとそれは僅かばかりでもお給料をもらっているから? 居場所がないから? 与えられたことをこなさないといる意味がないから? でも部長は倉庫で煙草を吸って、先輩も煙草を吸って、違う先輩はとてものんびり歩いている。わたしはそんな中で生きていては、息苦しくなってしまうから、なるべく早く離れたい。ひとつの理由には、大好きな先輩が辞めたこともあるだろう。でもその人だっておかしかった。すぐに怒っていた。殊更わたしに対してはひどい時期もあった。みんなおかしかった。誰も正常になれる環境ではなかった。わたしは出なくてはいけない。酒を楽しむ知識は身に付けた。もうわたしの生活に、酒を売ることは必要ない。