そおっと身を引いた。


何て声を掛ければいいのかなんてわからないから、今ごめんなさいを言うのもおかしいし、そもそもこんな時期になってどうやってあのときの気持ちを思い出せばいいのかもわからないし、ああ、そうやって、そうやって、大切な人を失くしていくのかなぁ、と一人枕を濡らしながら、でもそんなこと恋人にも言えず、誰にも言えず、ちくしょうと意識を閉じることしか出来ない。

繋がりなんて希薄なのかしら。
結局わたしは自分が中心の世界を謳歌していて、誰かに必要とされることが一番の価値で、それはもう恋人でもどこかの知らない男でも性欲でもなんでもいいのかもしれない。ずっとずっとそうだね。中学生ぐらいの頃からそうだね。好きでも何でもない人から好きって言われたら、そのときどれだけ好きな人がいても、それで幸せになっていたね。飢えているんだね。

たぶんこれからもずっと飢えているんだろうね。
わたしは動物なんだろうね。子宮で動いているんだろうね。彼を傷付けない程度に、ぎりぎりのところで、いつか捨てられるかもわからないようなところで、周りの人が見捨てるか見捨てないか、本当にぎりぎりのところで、その場限りの幸せに浸って喜んでいるんだろうね。


偉そうなことなんて何も言えない。だってそういう人生を望んでいたのは自分でしょう。廃れた女になりたかったの、自分でしょう。