少女マンガみたいな

メールで呼び出して3時間弱飲んできた。
待ち合わせ場所に着いてからは緊張が止まらなくてまったく話せなかった。「ごめんね、普段はこうなるの。人と一緒にいるのはとても緊張するの」と伝えたら、ばかーと言いながら頭をはたいてきた。それが、本当に馬鹿じゃないのと思っているのか、それともまったくもう心配かけさせるね、なのかはわからないけれど。
二人で飲むのは本当に久々だった。先週の日曜に大勢で飲んで(そして彼はそこで飲み過ぎて吐くという大失態を冒した上にわたしはそれをすべて処理したのだけど)、終電が同じ時間だったからそのときに少し二人で話したぐらい。で、そのあと家に帰ってからなぜだか6時間以上も深夜に長電話した。から、別に二人で話すこと自体は久々ではない。でも実際に二人で会うためにわざわざ約束をして、どこかで待ち合わせて二人で飲みましょう、ってのはたぶん、夏以来。あれから3か月弱経つけれど、わたしたちの周りには共通の知り合いが多過ぎる。
酔っ払うと可愛くなるという定評のあるわたしは(自称じゃない。他称だ)、彼のペースに合わせて飲んでみようという話に乗り、熱燗を2合弱飲んだところ、本当に酔っ払ってしまった。あんなに話すことと歩くことが大変だったことはない。一音一音を正確に発音しようとするとどうしてもスピードが遅くなる。たどたどしく呂律の回らないわたしを、彼は優しく眺めていた。実際優しかったのかどうかは知らないけれど。
「女の子らしくないっていう発言は、絶対に失礼だと思う」と酔っ払ったついでに言った。あれで半月ぐらい悩んだんだから、やめてよばか、と。それから彼は「そうか」と呟き、わたしの頭をしきりに撫でてきた。これで許してくれる? みたいなことを聞かれて、うん、と頷いた。
話している最中に手をパタパタと動かすようになっていて、いつの間にか一時間ほどわたしは彼と手をつなぎながら話していた。ぎゅうっと握って、相手も握って、とても不思議だった。手をつないだことは何回かある。この前の大失敗した飲み会でも、酔っ払って寝転ぶ彼の手を、わたしはずっと握っていた。わたしからつないだんじゃない。あいつからだ。


あのね、わたし、本当にきみと一緒にいると安心するんだよ、とても好きなんだよ、でもどっちかに恋人が出来ちゃったらこういうことはなくなるでしょう、だからね、ほんとはね、作ってほしくないんだよ、彼女。
じゃあ作らないでおこうか。

ってさ、言うけどさ、どういう意味なの?


帰り道、やっぱりふらふらしながらだったので、そこでも手をつなぎながら階段を上った。「手ぇなくても大丈夫だよう」と言うわたしに、「じゃあ離しちゃうよ?」と言う彼に、わたしはやだようと下を向いた。店を出てからしばらくして「やっぱりだめよ、付き合ってもいないのに手をつなぐなんて」と言うと、そうね、と彼は手を離した。と思ったら、やっぱりわたしが全然まっすぐ歩けなかったので、結局彼はわたしの腰に手を回して支えながら歩いていた。若干彼の身体にしがみつくように歩くわたしは、ふらふらしながら「寒いよう」と言って、彼にやっぱりしがみついていた。


と、書いてて恥ずかしくなってきたけれど、土曜日夜のお話。