AだからB、BだからC、なんてことはあり得ない。人の気持ちはそんな簡単に動かないし、できていない。もっと複雑にいろんな要素が絡まって感情は生まれるから、いちいちそこに理由付けをしてはいけない。


前々から、ひとに話をしてもらうのが自分の存在価値のような気がして、長時間全身全霊を相手に注いで愚痴を聞くのが生き甲斐、みたいなところがあったけれど、まだその癖はなくなっていなかった。五時間も同じ話をする彼女のことを見ながら、「おーおー視界が暗くなってきたぞ」とぼんやりしていた。口の減らない女は嫌われる、と昔誰かに言われたが、本当にその通りだなぁ、と思った。


ごめん、明日も仕事だから、と家に帰るなりトイレで嘔吐し布団に倒れ込んだ。まったく、世の中には他人の何もかもを一切汲み取れないようにできている奴がいるんだな。
他人の話は、話半分で聞かないと自分が持たない。全精力を注いで愚痴なんか聞くものじゃない。たとえば、あなたがそれで苦しんでいて、だれかに何かを話しても、そのだれかはあなたの人生を負ってはくれない。逆もまた然りで、わたしはあなたの人生を負えない。だからすべての力を注いでも疲れるのはわたしだし、なんだか肩透かしを食らったような気になるのもあなただけだ。他人に期待してはいけないし、要求させてもいけない。


想像力だよなぁ。あー。