バレンタイン何が欲しい?チョコ?ケーキとかはだめだよ、わたし作れないもん。
と話したら、返答はまさかの「クッキー」だった。
人生においてクッキーなんて代物を作ったことがないわたしからしたら、とんでもない上級クッキングを要求してきたなぁと躊躇したが、作ってみたら意外にも簡単だった。恐らく、チョコレートのテンパリングよりも簡単だ、わたしにとっては。
ただ、型抜きとかそういう類をまったく揃えないで作り始めてしまったので、棒状にして包丁で切るというなかなかアグレッシブな作り方をしたために、不揃いもいいとこだった。終いにはバターと砂糖の量の関係だかなんだか知らないが、オーブンの中で巨大化し、可愛らしい形になる予定だったクッキーたちは、楕円やら台形や「手作り感満載」の、中学生が初めて作ったような本命のそれみたいになってしまった。まぁ、気持ちは中学生が初めて好きな人に手作りの何かを渡すときと同じようなものだし、別にいいやぁと袋に放り込んだ。

おいしい?と聞いたら、にやにやしながらおいしい、と微笑んでいた。大事に食べるからちょっとずつ食べる、と言っていたので、無添加だから早く食べないと腐るよ、と返した。えっ、と笑いながら、もう一欠片食べていた。

春から半同棲生活が始まる。結婚するつもりだから、安心してね、と言われた。あなたの隣で安心しないわけがない。