人が人にしてやれることなんて、掴めるほどのこともないんだ。話を聞いてあげることしか、出来ないんだ。金を与えて何になる。何になるんだ、わたしにはそれしか出来ないし、彼にもそれしか出来ない。何が悪いんだ、彼女は悪くないんだ、父親も、母親も、彼も、誰も悪くない。悪いのは、社会なんだ、という結論に至る。わたしは何かしてやれるんだと思っていた、彼女に影響出来るんだと思っていた、そんなことはおこがましかった。わたしは何も出来ない。わたしは彼女のすべてを受け入れられない。それでも助けてあげられれば、と思う。なんて傲慢なんだろう。
弱者に優しくない社会だと心から思った。わたしは恵まれていた。ちくしょう、何もしてやれない、なんてさ、何で思うんだろうね。そんなのわかってるのにさ、ああ、もう、そんなの悲しいじゃん。
みんなで幸せになれればいいのに、幸せになれれば、普通の幸せを願うこともいけないことなのか。ああ、ねぇ、本当に。悔しかった。悔しさと切なさと悲しみが胸の中にじんわりと広がった。わたしが男だったら守ってやるのに、って思った。ちくしょう、悔しい。自分に何がしてやれるんだ、何もしてやれない。